one boy達のテニスへの想い・・・ 毎週木曜更新!
★第20試合 『LAST MATCH』
“何も無い場所だけれど
ここにしか咲かない花がある”
 (ここにしか咲かない花/コブクロ)

「どうします?」
「いや、けど俺達だけでも、さあ・・・。
それに、やるからって、福岡、広島から呼ぶわけにはいかないだろぉ?
それにアイツはロケが詰まってるらしいし、相手にならんよ、テニスしてないだろうから」
「ですよねぇ。じゃあアイツは?」
「アイツ?ああ、最近結婚したらしくて引っ越したみたいだよ。
まあ会社も急に休めないんじゃん?」
「そうなんすか。じゃあ2人で行きましょう。3セット、OKすか?」
「負けないぜ!」
「ちなみに、これまでの勝率は僕の方が上です」
「ふん、最後に勝った方が強いのよ」

ある場所である奴とシングルスをすることになった。
いや、ちょっと違うか。
しなきゃいけないんだ。
だってもう最後になっちゃうし。
「最後」?・・・うん・・・最後。

なくなっちゃうんだよ。
俺達の大切だった場所が。

コイツとは約10年前からの付き合い。
ここで出会った。
もちろんアイツらともね。
目をつぶれば鮮明に思い出せるよ。
レッスン中の真剣な顔、休憩中の笑顔、悲しいときの泣き顔、単純な酔っぱらいの顔、
数少ないけど喧嘩した時の怒り顔・・・。
ああ!一番は誰かにタバスコで叩かれた痛い顔?だったかな。
一旦俺が離れてから戻ってきたら、コイツしか残っていなくてね。
だけど再会して決めた事があった。
「俺達で一花咲かせるか!」
これ。
今となっては、咲いたか、咲かせられたかは分からないけど・・・。
けど、ここにしか、ここでしか咲かない花を目指していたんだ。
我武者羅だった。
特別な場所だった。
ずっとそこにあると思っていた。

”あの優しかった場所は今でも
変わらずに僕を待ってくれていますか?
最後まで笑顔で何度も振り返り
遠ざかる姿に唇かみしめた
今はこみ上げる寂寞の思いに
潤んだ世界を拭ってくれる指先を待っている”
  (ここにしか咲かない花/コブクロ)

お疲れ様。
忘れないから。
絶対。
THANK YOU,HASHIMOTO!
LOVE YOU FOREVER・・・・.
★第19試合 『IZAKAYAコミュニケーション』
「これは?」
「イースタン?」
「・・・じゃあ、これは?」
「・・・・ウエスタン?」
「じゃ、コンチネンタルはどう持つんだよ?」
「・・・こうっすか?」
「バ○!それじゃ一緒になっちゃうじゃんか!」

なんて質問だか説教だか・・・・良く分からない会話を繰り返しながらのミーティング。

もちろん近場の居酒屋の一席だから、そんなにお堅いものじゃないけどね。
しっかし・・・最近の奴らはグリップすらまともに答えられんのかね?
「じゃあ、お前がいつも握っているグリップは何て言うの?」
って質問には・・・・
「いや、ジュニア時代から、そうやって持てって言われてたんで・・・わかんねっす!」

それでいいのか?新米コーチ?
「それじゃレッスンで伝えられないだろ?ほら、今しっかり覚えろ」
で、飲み屋なのに、ラケットを出して、あ〜だ、こ〜だと握ってる。

暫くすると、そいつの恋愛事情に話が流れた。
ま、グリップは完璧になったから、許してやったんだけどね。
「最近別れちゃったんですよねぇ・・・」
「へぇ。ま、ドンマイだな」
「どっかに落ちてないかな〜?」
「何が?」
「いや彼女が」
「そんなわけ無いだろぉ」
「いや可能性がゼロじゃなければあきらめないっすよ!」
「ゼロだよ。で、何で別れたの?」
「ん・・・まあ、何となくっす」
「あれ、引きずってんの?」
「や・・・そんなんじゃないっすけど・・・」
「ドンマイ。結局、お前もテニスの道を選んだ不器用な男ってわけだな」
「『お前も』って一緒にしないで下さいよ!」
・・・・なんて、やり取りの後。
テニスでもレッスンでも何でもそうだが、大事な事は、失敗を反省し、次に活かす事。

てな事を酒を飲みながら話したわけ。

「次はもっといい恋が出来るよ。さ、帰るか」
「そっすね。反省を次に活かす!ですね」
「そう!で、これは何ていうグリップ?」
「・・ぐ・・・お会計っすか?ごちそうさまで〜す!」
「全然活かされて無いじゃんかよ!」
「じゃ、もう一軒、いやもう一回反省会しますか?」
「そんな返しだけはうまいのな!」
★第18試合 『3600秒の真剣勝負』
「叩いた〜!」
と言ったジュニアの声を聞いて、チーフコーチがラリーを止めてそこに近づいて行った。
「何だよ?どうした?」
「叩いた。ラケットで」
俺もラリーを止めて、その状況を見ていたけど、
明らかにチーフの顔つきが怒ってるのが分かった。
「何で叩いた?」
「・・・・」
別の奴が、
「ふざけてた」
「どっちが?」
「どっちも〜」
チーフはラケットを置いて、そこに座り込んでジュニア達を見た。
「見てたよ。君が叩いたところも、ふざけてたことも、み〜んな見てた」
「・・・・」
「ラケットは叩く道具なのかい?」
「違う・・・」
「じゃあ叩くな。絶対にだ。ラケットはボールを打つものだ。
テニスをするためのものだ。
これからも君がラケットで人を叩くというなら、今すぐコートから出ていきなさい」
「・・・・」
「どうするんだ?」
「・・・ごめんなさい。もう叩かない・・・」
「よし。じゃあ君逹は何でふざけてたんだい?」
「・・・・・」
「何でだい?」
「コイツが悪口言ってきた・・・」
「何て?」
「下手くそって」
「だってコーチとのラリーでアウトばっかりだったから」
「だから下手くそって言ったの?」
「・・・うん」
チーフの顔が少し優しくなって、
「いいか?アウトすることは凄いことなんだよ。
ボールがたくさん飛ぶってことだからさ。これはスゴいこと。」
「・・・・」
「分からないか・・・。今は分からなくてもいいよ。
だけど下手くそって言ったことは謝りなさい」
「・・・・ごめんなさい」
「よし」
これでまだ終わらなかった。
「で、君達はふざけてるこの子逹を何故止めなかったんだい?」
思いもよらなかった方向にお説教が向いたんだ。
「・・・・」
「みんな同じコートでテニスをしているんだから止めなきゃダメだよ。
なんでか分かるか?」
「仲良くしなきゃだめだから?」
「うん。それもある。けどね、もっと大事なことがあるんだ。
・・・いま、コーチがラリーを止めて何分たった?」
「3分くらい?」
「そうだね。その3分でコーチと何回、何球、何人ラリーができるの?
どれだけ上手になれるの?
みんなは上手くなりたくないの?」
「・・・なりたい」
「じゃあ1時間しかないレッスンでふざけてる子がいたら、
みんな同士で注意しなきゃダメじゃない?」
「・・・はい」
「じゃあ次のレッスンでは、いや今から気を付けようね。よし!ラリーを再開しようか!」

レッスン後のコートでチーフが俺に言った。
「レッスンはさ、1時間しか無いだろ?
このたったの3600秒で俺達はテニスの素晴らしさ、楽しさ、マナーを伝えるんだぜ。
あの子達の中から、世界に通用するプレーヤーが出てくるかもしれないし。
手は抜けないよな・・・」
「けど、今日の180秒はきっと大きな意味を持っていますよ!」
「だよな!」
「ですよ!じゃあ僕の為に、帰りに3600秒ほど付き合ってもらえます?」
「お前の成長の為に?仕方ねえなぁ。今日は一軒だけな!」
「やりぃ!じゃ、着替えてきま〜す!」
★第17試合 『忘れられない夜』
バイト時代の先輩が転勤になって、そこに呼び出しをくらった。
横浜から一時間?(遠いなぁ、まったく)
駅に着いて、周りを見てみると、意外に栄えてる街並みが飛び込んできた。
あとから先輩は「駅前だけね」なんて言っていたけど。
駅前の人混みの中から、先輩の姿を探す。
タッパがある人だから、結構すぐ見つけられるんだ。
と言っても、俺の方が数センチ高いんだけどね。
「おひさしぶりっす」
「おう。おまえ腹減ってるよな?何食いたい?」
「いや何でもいいっすよ」
「じゃ、俺、餃子とレバニラ。いくぞ」
「うす」
何と言うか、気を使ってくれてそうで、でも結局最初から行くところは決まってたん
だろうな。
だって昔からそんな先輩だしね。
まあ、ある意味ワガママなんだな。
で、餃子を食べながら一杯。
「どうなんだよ?最近は?」
「いや〜大変す。なかなかうまくは行かないですが、これからですよ」
「そうか。自分の選んだ道だから、納得できるまでしっかりやれよ」
「うす。向かい風はまだまだ吹いてますね。負けませんけど」
「風見鶏、ね」
  (※参照:One Boyの『待ってろ!ジュニア日記』第15ゲーム『風を探して』)
な〜んて近況報告があって、先輩はレモンサワーを注文。
相変わらず飲む人だ。
「テニスは?やってんの?」
「いや、それがですねぇ・・・・」
「なんだよ、やってないんか?」
「なかなか機会がなくて・・・・」
「機会なんてもんはなぁ、自分で作るんだよ。仕方ねぇな。試合にでもでるか?」
「いいっすねぇ!」
「んじゃ、ちょっとマッテロ」
そう言って、携帯をいじり出した数分後。
「決まった。○月○日の○曜日。男ダブね。練習しとけよ。・・・すいませ〜ん!!」
「は?」
「だから、申し込んだから、試合。男ダブで。あ、レモンサワーもう一杯ね」
「ええっ?!」
「何だよ?嫌なの?お前はなんか飲む?」
「あ、じゃあレモンサワーで。
(嫌だって言ったって、どうせダメなんでしょ?)
そうじゃないっすけど。・・・予定も空いてました」
「じゃ、練習しとけよ。お前、バックサイドだよな?
ダブルス組むのなんて一年以上ぶりか」
なんて会話の中、互いのテニスの話になったり、昔のバイト先の思い出話になったり。
「出るからには勝ちたいっすね!」
「当たり前よ!負けに行くためにする戦があるか?」
「ですよね!じゃ、優勝で!」
「最善を尽くそう!とりあえず今日は決起集会って事で、派手に遊んじゃうか?
もうすぐアイツも来るし」
「そっすね!あ、来ましたよ!」
「お待たせっス!あれ?もう飲み終わりですか?じゃ、ボーリングでも行きません?」
「いいね!じゃ、とりあえず3セットマッチでいくか!」
これこれ、このノリなんだよね。
やっぱり変わってなかった。
ちょい酔いの俺達は残っていたレモンサワーを一気に飲み干し、街へ出る。
「今だけは忘れちまおう」
そんな風に決めた夜だった
★第16試合 『桜チル頃ニ』
この季節になると、あの頃に見た桜を思い出す。

ちょっとばかりテニスをした後に、何気なく行った公園。
そこには、「まさに満開!」と言っていい桜が沢山あった。
車の窓から顔を出してみると、フワリと花びらが飛び込んでくる。
いくら舞ったとしても、無くなる気配を微塵も感じさせない、そんなトコロが好きだった。
そう、好きだった。
そこでは、春の暖かさも手伝ってか、車を駐車場に止めて少しだけ眠った。
その時に流れていたBGM。
なんの事は無い、それだけの事。
ただ、それだけの出来事。

人はみな 心の岸辺に 手放したくない花がある
それはたくましい花じゃなく 儚く揺れる 一輪花
花びらの数と同じだけ 生きていく強さを感じる
嵐 吹く 風に打たれても やまない雨は無いはずと
桜の花びら散るたびに 届かぬ思いがまた一つ
涙と笑顔に消されてく そしてまた大人になった
追いかけるだけの悲しみは 強く清らかな悲しみは
いつまでも変わることの無い
君の中に 僕の中に 咲く Love・・・
(桜/コブクロ)


こないだの春の嵐と長く降り続いた雨で、流石の桜達も・・・。
散る気配のなかったはずのコイツラとは、また来年までサヨナラ。
太い幹から伸びた枝には、もう新しい緑の新芽が飛び出している。

うちのスクールのジュニアクラスでは、進級、進学に伴い、大きく顔ぶれが変わる時。

あいつら、レッスンでは、様子を伺うような表情でこちらを見ている。
この“新芽”達との勝負は、今、この瞬間から始まっているんだな、って。
蕾のままになんかさせないよ、絶対。
来年、きっちり咲こうな?

近くの学校も始まり、通学路を歩いている学生の姿をとてもまぶしく感じながら、
「俺もあんな時代があったな・・」なんて、また昔を思い出す。
気付くと、いつの間にか年齢があがっちまったもんな。
だけど・・・だけどココは、心は変わってないよ。
アツい何かはまだまだ流れてる。

さあ、今日もコートへ!
前を見て駆け抜けよう!