one boy達のテニスへの想い・・・毎月10日、25日更新!!
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★第10試合 『風の中の少女』
午前中の暖かな気候が嘘のように、冷たい風が吹き始め、重い雲が空を覆いだす。
頬に冷たい何かを感じたが、
「気のせいだ」
と自分に言い聞かせ、ジュニアにボールを出し続ける。

「大丈夫?頑張れる?」
身長と同じくらいのラケットを両手でしっかりと握り締めた小学2年の女の子は小さく頷いた。
今にもこぼれ落ちそうな涙を我慢しながら。
俺は、今日、その子に会った瞬間からの出来事を頭のなかで思いだし、整理し始める。
分からない。
その少女を悲しくさせている原因が掴めないまま、結局は雨が強くなってきてレッスンは中断。
「みんな中に入って!」
と俺が言い終わる前に、少女はコートを駆け出し、母親の元へ。
俺が何かしてしまったのか?
隣にいた若手コーチか?
クラスの悪ガキ大将のあいつか?
俺は色々な思いを抱きながら、親子の元へ急いだ。
何れにせよ、気付けなかった自分が腹立たしかった。

この子がテニスを嫌いになったらどうする?
彼女のこれからの大きな道を閉ざしてしまったらどうする?
言葉に出来ない悔しさ、辛さが大きな波になり俺を飲み込もうとしていた。
心の中では少女に謝り続けながら、
(ごめん、ごめんね)
「どうしちゃったのかな?」
少女の身長まで頭が下がるように膝を曲げ、腰を落とした。
必死に母親にしがみついた彼女はチラッと俺を見ただけだった。
悲しみの涙が俺の心を震わせ、押し潰されそうになった、その時。
「風がね・・・風が嫌いなんですよ、この子」
一瞬戸惑い、間違った反応だった気がしたが、ちょっと安心してしまった自分がいた。
「ああ、そうなんですか」
「ビューって音がね、嫌いなんだよね?」
彼女は小さく頷く。
それだけだった。
「じゃあ、帰ろうか」
母親の声に、また頷いただけだった。
「さよなら、またね」
そして、俺の声には小さな手を小さく振って応えてくれた。
「バイバイ、コーチ」

外は雨が上がり始め、風も治まってきたみたいだ。
もちろん俺の心の中も同じだった。
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