one boy達のテニスへの想い・・・ 毎週木曜更新!
★第18試合 『3600秒の真剣勝負』
「叩いた〜!」
と言ったジュニアの声を聞いて、チーフコーチがラリーを止めてそこに近づいて行った。
「何だよ?どうした?」
「叩いた。ラケットで」
俺もラリーを止めて、その状況を見ていたけど、
明らかにチーフの顔つきが怒ってるのが分かった。
「何で叩いた?」
「・・・・」
別の奴が、
「ふざけてた」
「どっちが?」
「どっちも〜」
チーフはラケットを置いて、そこに座り込んでジュニア達を見た。
「見てたよ。君が叩いたところも、ふざけてたことも、み〜んな見てた」
「・・・・」
「ラケットは叩く道具なのかい?」
「違う・・・」
「じゃあ叩くな。絶対にだ。ラケットはボールを打つものだ。
テニスをするためのものだ。
これからも君がラケットで人を叩くというなら、今すぐコートから出ていきなさい」
「・・・・」
「どうするんだ?」
「・・・ごめんなさい。もう叩かない・・・」
「よし。じゃあ君逹は何でふざけてたんだい?」
「・・・・・」
「何でだい?」
「コイツが悪口言ってきた・・・」
「何て?」
「下手くそって」
「だってコーチとのラリーでアウトばっかりだったから」
「だから下手くそって言ったの?」
「・・・うん」
チーフの顔が少し優しくなって、
「いいか?アウトすることは凄いことなんだよ。
ボールがたくさん飛ぶってことだからさ。これはスゴいこと。」
「・・・・」
「分からないか・・・。今は分からなくてもいいよ。
だけど下手くそって言ったことは謝りなさい」
「・・・・ごめんなさい」
「よし」
これでまだ終わらなかった。
「で、君達はふざけてるこの子逹を何故止めなかったんだい?」
思いもよらなかった方向にお説教が向いたんだ。
「・・・・」
「みんな同じコートでテニスをしているんだから止めなきゃダメだよ。
なんでか分かるか?」
「仲良くしなきゃだめだから?」
「うん。それもある。けどね、もっと大事なことがあるんだ。
・・・いま、コーチがラリーを止めて何分たった?」
「3分くらい?」
「そうだね。その3分でコーチと何回、何球、何人ラリーができるの?
どれだけ上手になれるの?
みんなは上手くなりたくないの?」
「・・・なりたい」
「じゃあ1時間しかないレッスンでふざけてる子がいたら、
みんな同士で注意しなきゃダメじゃない?」
「・・・はい」
「じゃあ次のレッスンでは、いや今から気を付けようね。よし!ラリーを再開しようか!」

レッスン後のコートでチーフが俺に言った。
「レッスンはさ、1時間しか無いだろ?
このたったの3600秒で俺達はテニスの素晴らしさ、楽しさ、マナーを伝えるんだぜ。
あの子達の中から、世界に通用するプレーヤーが出てくるかもしれないし。
手は抜けないよな・・・」
「けど、今日の180秒はきっと大きな意味を持っていますよ!」
「だよな!」
「ですよ!じゃあ僕の為に、帰りに3600秒ほど付き合ってもらえます?」
「お前の成長の為に?仕方ねえなぁ。今日は一軒だけな!」
「やりぃ!じゃ、着替えてきま〜す!」