one boy達のテニスへの想い・・・ 毎週木曜更新!
★第25試合 『ある休日の一日』
「おせーぞ」
「すいませ〜ん。ちょっと寝坊しちゃって」
「ったく。お前を誘わなきゃ良かったよ」
「ひっで〜。別に休みなんだからちょっとくらいいいじゃないっすか」
「今日はなぁ、やること盛りだくさんなんだよ。時間が惜しい」
「湘南の方にあるスクールを見に行くだけですよね?」
「それは予定の一つ。他には来月の大会へのエントリーとか、練習するコートの予約とか。あ!
レンタルしたDVDも返しに行かなきゃいけなかったんだっけ!」
「大変ですねぇ」
「バカ。お前も一緒に行くんだよ。」
「えぇ〜。まじすか?」
「嫌なら帰る?」
「ちぇっ。分かりましたよ」
「よろしい」
「でも来月も試合に出るんすか?」
「うん」
「毎月よく出ますねぇ」
「いや今回はさ、先輩から誘われちゃって。断れないだろ」
「ですよねぇ」
「て言うか、お前も出るからね」
「え?」
「断れないだろ?」
「・・・・・・ちぇっ。分かりましたよぉ。で、コートはどこ予約するんですか?」
「河川敷」
「あそこっすか〜?」
「嫌なら来なくてもいいんだよ?」
「いや、行きますけど。あそこ、駅から遠いんですもん」
「大丈夫。車出すよ。あ、部長も来るみたいだよ」
「マジっすか?じゃあ打ち上げは焼肉にしましょうよ!」
「お前、奢りを期待してない?」
「いや、いやいやいや、いや・・・」
「あんまりそういう期待をしないの」
「へ〜い」
「・・・・けど甘えてみような」
「なんだ!先輩もじゃないっすか!けど、休みの日なのにホントに行動的ですよねぇ」

「そうか?だって自分から動かなきゃさ。まだまだ上手くなりたいしね。受け身で上達するのは
限界があるぜ」
「はぁ」
「誘われなきゃやらないお前も限界が近いよ」
「え?」
「だから、自分で考えて動かなきゃ成長なんかしないんだよ。今の世の中は全部与えられちゃう
だろ?モノも知識も金で買える、と思ってる。違うんだよ。真のチカラは様々な経験から得なきゃ
いけないんだ。苦労を重ねてだな・・・」
「はいはい!長いっす!わっかりました!」
「なんだよ、ホントに分かったの?」
「そういう話になると止まらないからなぁ」
「お前なぁ・・・あ!こんな時間だ!やべ!急ぐぞ!」
「へいへ〜い」」

確かに歳を重ねて大事なモノが見えなくなってきたのかも。
止まるのはまだ早いよな。

何を忘れたんだろう
何を覚えたんだろう
何を見つけたんだろう
(コブクロ/蒼く優しく)
★第24試合 『champion's feelings』
「見た、決勝?6-1、6-3、6-0だぜ。強いと言うか、バケモンだよな」
「最後なんて諦めちゃったんですかねぇ、ダンゴっすよ!」
「そんなわけないだろ。
けど世界1位が1ゲームも取れない、そんな状況の王者の心境を知りたいね、俺は」
「僕は王者にゲームを与えない男の興奮を味わってみたいっす。
まあ今日は1ゲームも取られないつもりで頑張ります!」
「空回りしないようにな」
「へへ、大丈夫っすよ。
あれ?ガット張り替えて来たんですか?きったね〜、自分ばっか」
「なに?お前は張り替えて来なかったの?ちょっと見せて。
うわ!これは試合中に切れちまうね」
「っすかね〜」
「あのな、道具にはな、気を使わないとな、イカンのよ。
なんせ水泳の世界では着てるもんで一秒世界新が変わるんだぜ!」
「あの水着、着るのに30分くらいかかるらしいっすね」
「へぇ、そりゃ練習一つするのも大変だな」
「・・・・どんだけ小さいんですかね」
「・・・・何が?」
「いや水着が」
「小さいから着づらいって?」
「手のひらサイズくらいなのかなぁ?」
「アホなこと言ってないで、降りるぞ」
「もう着いたんですか?ヘ〜イ」

・・・・・・・・

「ガットは切れるし・・・・」
「だから言ったじゃんか」
「スポーツドリンク飲まずにいたら、途中でバテました・・・・」
「お茶なんか飲んでっからだよ!」
「結局一回も勝てないし・・・・」
「最後なんて1ゲームもとれなかったねぇ、君」
「取らせてくれなかったのは誰ですか?!
・・・王者の気持ちがちょっと分かった気がします」
「全然違うと思うけど。・・・お前が王者なの?」
「・・・ぐ・・・また行きましょう!次は万全な準備をします!」
「OK!けど、その前にもっと練習しなはれ!」
★第23試合 『梅雨来たりなば』
静かに、穏やかに永遠に降り続く。
そんなイメージ。
気付くと、しっとりと全身が濡れている。
『梅雨入りか・・・今年は早いなぁ』
毎年、同じ様なセリフを、違う誰かが言っている。

そうさ、皆が感じる、最もな事は誰かが言うんだ。
だから、君も俺も無理して口を開く必要はないんだよ。
俺達が口を開く時は、どうしても聞いて欲しい時だけ。
だからこそ、その時は耳を傾けておくれ。

テニス界史上最高と言われている現王者は、一時期のあの圧倒的な強さを感じさせてくれない。
けど、そんなの当たり前なんだよ。
他のプレーヤーだって必死にテニスしてるから。
追い付かれ、引き離し、追い抜かれ、抜き返す。
当ったり前だろ?
なのに俺達は、彼等の状況を訳の分からない理由を付けて偉そうに語り出すんだ。
そう、偉そうに。

おい。
分かってんのか?
何が正しいんだ?
誰が正しいんだ?

駄目だよ。
俺だって当たり前のことしか言えない当ったり前の野郎。


梅雨が終われば、夏が来るんだ。
好きな季節。
パワーの季節。
だから、明日からあと一歩多く。
だから、あと一球多く。
だから、あと一声大きく。

まだまだこれからだな。
★第22試合 『MY ROAD,YOUR ROAD』
何処に向かって進んでいますか?
見えていますか?
きちんと歩いていますか?
別に走ってなくてもいいから。
たまになら立ち止まってもいいから。
分かれ道が幾つあっても、その道を選んだら、その瞬間からホントの道になる。
辿り着ければ、いや向かっていれば、いいんだよ。
時間がかかっても、迷っても、途中間違えていても、いいんだよ。

今、こうしてテニスコートに立てること。
テニスが出来ること、伝えられること。
テニスと、貴方と出逢えたこと。
まだまだ未完成な俺達は、手探りな歩を重ね、前へ。
躓き、転び、起き上がり、前へ。
これから先、俺にも君にも数えきれない壁があるだろう。
だけど、それと同じ数の、いや、それ以上の幸せが見つかるはず。
そんな道を進んでいるはず。

こんなに強い自分がいる事に気付いたのは
この道が誰でもない 自分で選んだ道だから
(轍/コブクロ)

ほら、立ち上がって進もう。
君の前に広がる道を。
そして俺は俺の道を。
★第21試合 『蚊帳の外では』
気が付けば昼前。
意識がはっきりしないまま、手を伸ばしてカーテンを開けると昨夜の台風が嘘のように、
青空が広がってる。
この空が毎回同じことを思わせる。
「夢でもみてたのか?」
近くのコンビニまで朝食だか昼食だかを買いに行った奴が戻ってきて、
サンドイッチを俺に手渡した。
「ビール?」
聞かれた一言に、つい、
「ああ」
と返しちまった。
いかんな。
まあ休みの日くらいは・・・なんて言い訳をしながらサンドイッチを流し込んで、
テレビに何となく目を向けるんだ。
新宿駅が写し出され、交通機関の乱れがどうとか・・・・今の俺に言ったって仕方ないだろ。
部屋を出ようとしない俺には、動いてようがいまいが関係ない。
「大変だね」
なんて一言で済ませてしまう。

海外テニス界のヤングジャパニーズの進出や、
国内テニス界の元世界ランカーの復帰、快進撃。
明らかにマスコミが取り上げ、大騒ぎしている。
けど、
「すごいねぇ」
で片付けてないか?
さらに、
「才能がちがうねぇ」
なんて軽々しく言ってないか?
極めつけに、
「もっと頑張ってもらわなきゃねぇ」
なんのこっちゃ。
なんも分かってねぇ。
そして俺もそっち側だったな。

中にいるだけでは、何も伝わらない、伝えられない。
俺達は、もっともっと部屋から出て見なきゃ、感じなきゃいけないものがあるんだよ。

『電車大丈夫だった?』と新橋まで通勤してる奴にメールを打ちながら、アポ取り。
「明日、ちょっと見に行かない?」

部屋から出る、俺達はそこから始めりゃいいんだよ。